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RFレコーダー・キャプチャー&プレイバック ~開発者インタビュー~

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ドルフィンシステムではRFレコーダー・キャプチャー&プレイバックシステムという製品を開発しています。

  • RFレコーダー・キャプチャ&ープレイバックシステムとは何か?
  • どういうメリットがあるのか?他社製品との違いは?

などなどのお客様の疑問を、わかりやすいインタビュー形式でまとめました。

 どういうものですか?

Q. この製品についてお聞かせください
福島 はい。

RFレコーダー・キャプチャー&プレイバックシステム(以下、RFレコーダー)は、飛んでいる電波を収録してストレージに保存するための装置になります。

また逆に保存したデータ(電波)を出力・再生することもできます。

目的は、無線を組み込んだ製品や無線装置自体の研究や開発、障害調査のために使われる製品です。他社製品との違いは以下の3点です。

  1. 汎用モジュールを使用することで、低価格・短納期を実現しました。
  2. 汎用モジュールの組み合わせで構築するので、お客様の要求仕様と予算に合わせたハード選定が出来ます。
  3. 自社開発のソフトウェアで「3ステップのらくらく保存・再生」ができるようになっています。
Q. 具体的にはどのような分野でどのように使われるのですか?
福島 電波を収録したり再生する装置のため、主に無線を取り扱うお客様になりますが、近年はとても幅広いお客様がターゲットになってきています。

例えば以前なら、キャリアの研究所や大学などの研究機関が主なターゲットでしたが、近年では家電メーカさまから無線とは直接関係のないお客様家電メーカ様や自動車部品メーカ様などが新たに無線技術導入するためにも使用されています。

Q. 幅広いお客様の分野とはどのようなお客様ですか?
福島 たとえばあるメーカさん。こちらは生産設備のなかで有線接続している箇所を無線接続にしたいという要望があり、新しい通信方式策定用の研究開発に使われています。

次に変わったところでは、ある輸送機器メーカさんの工場内で使われています。工場内では無線LANを搭載した機器を使っているのですが、その機器の無線LANが時々調子が悪く切断してしまいます。

それを端末メーカに言うのですが、なかなか直してもらえません。

そこでレコーダを使って現場の電波を収録して、その電波を暗室内で端末に送信して異常状態を再現させています。

あるメーカさんは自動車用部品を開発しているのですが、その部品の具合を測定するために使用して頂く予定です。

実績はいかがですか?

Q. 導入実績はいかがでしょうか?
福島 先ほどお話ししましたように、無線関係のお客様以外にも広がってきています。

こちらの実績をご覧下さい。

JAXA様
PXI 製品でロケットからのRF 信号を長時間記録、 これまで不可能だった電波干渉の解析に活路

NICT様
無人飛行機用制御回線における無線通信技術仕様の策定に向けて、 小型プロペラ機に搭載可能な無線計測システムをPXIベースで構築

こちら2つの事例はどちらも弊社が手がけた案件です。

両方とも受託サービスとして開発した案件で、直接弊社のRFレコーダー技術をベースにした無線信号解析システムです。

どのような使い方をするもの?

Q. 具体的にはどのように使われているのでしょうか?
福島 基本的には、無線機器の通信内容を解析するために使用します

携帯電話を傍受するとか危ない話ではなく、例えば携帯電話に不具合があった場合その通信内容を見なくてはなりません。

通常ではスペクトラムアナライザなどの測定器で目視で観測するのですが、見落としが発生したり装置の構造上長時間電波を取り込む事は出来ません。

このような場合に、全部収録できるRFレコーダー・キャプチャー&プレイバックシステムが役に立つのです。

RFレコーダー・キャプチャー&プレイバックシステムは、指定した周波数の指定した帯域をすべてストレージ(SSDやRAID)に取り込みます。データ落ちなく取り込んだあと、オフラインでゆっくり解析できます。

さらにストレージ容量によりますが、1時間から数十時間のデータを連続して取得することが可能です。そのデータは(IQバイナリ形式)なので、お客様は自らの開発されたソフトウェアやLabVIEW, MATLABなどのソフトを使用して解析します。

ドルフィンシステムで解析ソフトを開発する場合もあります。

Q. 今までの測定器とは違うレベルの観測が出来るのですね?
 福島 はいそうです。

先ほど申し上げましたように、測定器では目視での見落としがありますし、長時間の収録が出来ません。

そこにあるすべてを保存しておけるのはRFレコーダーの大きな利点です。

データを保存しておけば後々のためのエビデンスとして活用することが出来ます。

Q. エビデンスとはどういうことですか?
 福島 通常無線機器を開発した場合、その特性や性能をかならず測定して測定結果をグラフにしておきます。

もしグラフ作成時の不手際や解析ソフト自体に不具合があり解析結果に誤りがあった場合、どうなるでしょうか?再測定は再現性含めてやっかいです。

こういう時に備えてRFレコーダー・キャプチャー&プレイバックシステムで保存したデータも一緒に保管しておくと安心です。

Q. 他の使い方は、いかがでしょうか?
 福島 これは研究よりの話ですが、電波環境がどのようになっているのか?を明らかにするためにも使用されます。

サウンディングと呼ばれる技法です。

ある位置から信号を送信し、もう1地点で受信します。その受信データを解析するとどのような環境を電波が飛んできているのか推測することが出来ますので、新しい通信方式の研究に役立てるデータを取得することが出来ます。

Q. ここでまとめますね?
 福島  無線を組み込んだ製品や無線装置自体の研究や開発のために使われる製品で、

• 無線関連のお客様に加えて、これから無線技術に取り組むお客様もターゲットになっている。
• 指定した周波数帯をすべて取り込むので、測定器と比べて見落としがなく、長時間の集録が可能。
• 測定器では失われてしまう生データを保存しておくことで安心

ということですね?

 福島 はい、そうです。

コストとハードウェアについて

Q. コストや納期はどうですか?
 福島 今までよりも無線の研究開発の裾のが広がり、そして研究開発が加速しています。そこで求められるのが、短納期と低コストです。

納品するまで何ヵ月もかかっているとそれだけで命取りです。
そして低コストも重要です。

ユーザさん担当者様がほしいと思ってもそれを内部で稟議を通す作業があり、説得材料を用意しなければならず大変です。

コストが高くなればなるほど会社として購入できる可能性が低くなります。

レンタルですまないのか?本当に必要なのか?設備になってしまうと減価償却しなければならない。などの本来とは違った理由が出てきてしまいます。

これらのハードルをできるだけ下げるためには、必要なスペックを得るために最低限のコストで実現することです。

Q. 最低限のコストを実現できたのですか?
 福島 実現することができました。

それはNational Instruments製のRFモジュールを使用していることです。
今までのRFレコーダーは測定器を使用したり、カスタム開発品を使用していたため納期とコストがかかりましたが、汎用品を組み合わせるため、納期・コストが自動的に短縮できました。

組み合わせを選択できるため、お客様の予算に合わせてスペックが選べます

Q. 先ほどのお客様に合わせたスペックを選べるということでしたが、具体的にはどのようなものですか?
福島 では具体的にご説明します。

NI製モジュールには幾つかのRF製品があり、弊社で対応しているのは以下のチャートにあるものです。

50MHz から26GHzまでの対応周波数、25MHz BW から765MHz BWという広帯域に対応しています。これはFMラジオ5Gで使われるミリ波の帯域まで幅広く対応しています。少しずつスペックや用途が異なっていますので、これらを組み合わせます。

RFレコーダー・キャプチャ&プレイバックシステム構成例
Q. なるほど。組み合わせとしてはいくつか種類あるのですね。似たような構成がありますが、何が違うのでしょうか?
福島 RFモジュールに、USRPなどのSDR製品を使用したものと、モジュール式測定器を使用したものがあります。

チャートの製品左上にある赤く「測定器」や青く「SDR」と書いて区別してあるのが、それです。

モジュール式測定器を使用したものは測定器並みの精度を要求される際に使用します。小さくても中身は測定器のため、高価です。

USRPなどのSDR製品はあくまでも送受信機であるため、さほど精度を気にしない場合に使用します。

Q. ではどのくらい精度の違いがあるのでしょうか?
福島 こちらで比較したグラフがありますのでご覧ください。

802.11aの連続信号を収録し解析した結果をEMV, BERで表しています。
商品選択の参考にして下さい。(現在準備中)

Q. チャートにPXIとPCの2つがありますがなんでしょうか?
福島 PCと書かれているものは、制御するためのコントローラにワークステーションタイプのパソコンを使用します。ギガビットイーサネットかPCI Expressで接続します。

PXIと書かれているものは、このPXIという形の測定器型のシャーシに挿入して使用します。

storage-50mhz.png

4スロットのPXIシャーシ

Q. 利用形態がいくつかあるのですね?
福島 はい。PXIに関しての形式は以下のページにQ&Aでありますので、是非ご覧下さい。

(現在準備中)PXIってなんですか?

ソフトウェアについて

Q. ハードウェアはわかりましたが、ソフトウェアはどうなっていますか?
福島 ドルフィンシステムが開発した収録&再生ソフトがあります。
こちらはわずか3ステップで収録と再生ができてしまうソフトです。
Q. ソフトを自社開発したのですか?
福島 はい自社開発しました。

もともと受託サービスのなかでRFレコーダーに似たソフトウェアを開発していたため、その素地はありました。

またRFレコーダ製品などのソフトは海外製が多くあります。なにかトラブルや質問があっても代理店を経由して海外に問い合わせをする必要があります。

これが時間がかかるんですよね。

ですが、弊社は自社開発することでトラブルや質問・要望があった際に直ぐに答えられるようにしています

Q. 作り手の顔が見える製品ですね?
福島 はい。産地直送の装置です。

私福島が作りましたので、文字通り顔が見えます(笑)

Q. 次に簡単操作ということですが、どの程度簡単なのですか?
福島 本当に簡単です。

たとえばUSRPを使用したRFレコーダーなら、PCとUSRPを接続して頂きます。次にソフトを起動したら、必要なパラメータを設定し、開始ボタンを押す。

これだけです。

3ステップで集録

Q. 操作はこれだけですか?
福島 はい。これだけです。

本当に収録できたかどうか、確認してみましょう。

付属のデータビューアを起動します。
こちらで保存したファイルを開くと、波形が表示されます。スペクトラムアナライザの機能もありますので、便利ですよ。

集録されたデータを付属データビューアで見てみる

貸出・評価・購入などについて

Q. ハードウェアとソフトの話は分かりました。

しかし本当に自分の用途にマッチするかどうかわかりません。

福島 はい。

使えないものを買ってしまっては大変です。

ドルフィンシステムでは、貸出機を用意してありますので、購入前にお試しいただくことができます。

USRP製品なら二週間お使いいただけます。

Q. 先ほどデータを保存して解析するという話がありましたが、解析も行うのですか?
福島 はい。

RFレコーダーをお使いになるお客様は、実際にデータを保存しただけということはあり得ません。

かならずデータを保存したあと、解析する作業が必ずあります。

お客様のご要望があれば解析もいたしますし、データ測定システム自体を作ることもいたします。

たとえばお客様の方である環境で、あるデータがほしいという場合、送信するデータ作成と解析も含めた形でお受けすることもできます。

Q. そういうサービスもあるのですね?
福島 はい。弊社の受託サービスではこのようなお客様が大半です。

いくつか実績もありますので、ご相談ください。信号生成や解析も追加コストなく出来る場合もあれば、カスタムで開発してお納めすることもできます。

Q. 次にどうしたらよいでしょうか?
福島 まずはお客様の方で、どのようなことを行いたいのか検討してください。

どのような信号をどのような環境で出力するのか?収録したデータはどのように解析するのか?すでにお持ちのソフトで行うのか?LabVIEWなのか?MATLAB?SystemVueで解析するのか?

検討を進めるなかで、出来るだけ早段階でお声掛けいただければ、弊社のノウハウや経験を生かすことが出来、お客様の面倒を省くことが出来るかもしれません。

すでにこれらが明確な場合は、対応周波数帯、帯域幅、予算を明確にした上で、貸出をご依頼ください。

在庫があれば即日に出荷いしますので、明日には収録・再生が可能になります。

また弊社の開発事例をお読み頂くと、弊社がどのようなことまで踏み込めるのかイメージがわくと思います。

 

JAXA様
PXI 製品でロケットからのRF 信号を長時間記録、 これまで不可能だった電波干渉の解析に活路

NICT様
無人飛行機用制御回線における無線通信技術仕様の策定に向けて、 小型プロペラ機に搭載可能な無線計測システムをPXIベースで構築

京都大学様
NI LabVIEWとRFモジュールの活用で、マルチユーザMIMOの実証実験システムを構築

 

RFレコーダー・キャプチャー&プレイバックシステム

Q. わかりました。今日はどうもありがとうございました。
福島 こちらこそ長い間ありがとうございました。

文責 : ドルフィンシステム福島

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