フェージングシミュレータ

フェージングシミュレータRivieraとは何か?~開発者インタビュー~

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フェージングシミュレータRivieraとは何か?~開発者インタビュー~

ドルフィンシステムではRivieraというフェージングシミュレータを開発・販売しています。

  • フェージングシミュレータとは何か?
  • どういうメリットがあるのか?他社製品との違いは?

などなどのお客様の疑問を、わかりやすいインタビュー形式でまとめました。

何をするものですか?

インタビュアー フェージングシミュレータという装置はどんなものなのですか?
 笹生 この装置は、実際に電波を飛ばさなくても、あたかも飛ばしたかのように電波の飛び方をシミュレーションする装置です。

主に無線通信機器の性能をテストするために使う計測器の一種です。

インタビュアー どのような性能を計測するための装置なのですか?
 笹生 無線通信機器は、送ったデータなどが正しく受信されることが前提です。

しかし、皆様も携帯やスマホでご経験があるように電波状況が悪いとうまく通信ができませんよね。そこで電波状況の良さの程度に応じて、どの程度の通信ができるといった性能を評価するために使う装置です。

どの程度といった性能の指標としては、ビット誤り率、通称 バー(BER)と呼ばれるもので評価をします。これは、例えば 100ビット送って、何ビット正しく受信できたかを表す指標です。他にもパケット誤り率やスループットなどさまざまな指標の性能評価を行うために用います。

インタビュアー  この装置を使うことで、無線機器の性能評価を行えるのですね。
 笹生 はい。ただ、注意してほしいことがあります。

少しややこしいのですが、この装置は、そうした性能評価の結果を出してくれるわけではなく、性能評価をするために必要な電波状況を擬似的に作りだす装置なのです。

インタビュアー ややこしいですね。
 笹生 そうなんです。そこがこの装置の弱点で(笑)。

性能評価をするための計測器ではあるのですが、この装置が性能を評価できるわけではありません。評価結果を取得するための計測器はもちろん必要ですが、定量的な性能評価を行うための電波状況を作り出す装置が必要になります。

例えば、A方式の端末とB方式の端末の性能比較をする場合、電波状況が安定して良ければ同じ性能だったとします。しかし、電波の状況が悪くなった時、実は、

  • A方式 の端末はレートは遅くなっても出力は変えずつなげようと頑張るが、
  • B方式の端末は出力を上げて改善しようとする

など挙動が違う場合があります。

どちらがいいかどうか、という判断はおいておいて、こうした性能を評価比較するには同じ電波状況で比較していくことが必要です。

フェージングシミュレータは、送信器と受信器の間に挟んで使用し、送信、受信の間の電波状況を自在に作り出せる装置なんです。

インタビュアー わざと悪い電波状況を作り出すと。
 笹生 そうなんです。わざと作ります。

もちろん良い状態も作れますので、同じ無線機器での良い状態と悪い状態での性能比較もできます。どこまでが性能限界なのか、ということも知ることができると思います。

インタビュアー 具体的に電波状況の良し悪しというのはどういう状態なのですか。
 笹生 電波というものは目に見えないのでわかりにくいですよね。

例えば送信アンテナを電球、受信を目としましょう。離れた場所で電球をつけます。電球とあなたの間に何もなければまぶしい光が目に入ってきますよね。

では、さえぎるものを置きましょう。

大きさにもよりますが、さえぎられると電球は見えなくなります。でもぼんやりと点いていることはわかりますよね。もし横に鏡があれば、鏡越しに電球の光が見えます。鏡がくすんでいれば光は弱く見えます。受信者が移動すれば、目に入る電球の光の強さも変化します。

電波も同様で、この光のように周りの状況で強く受信できたり、弱くぼんやり受信できたりします。また移動することで、良くなったり悪くなったりします。

インタビュアー でもわざわざこの装置を通さなくても実際に同じ環境で電波を出して計測しても良さそうですが。
 笹生 ええ。実際に電波を出して計測する「フィールドテスト」は最終的には必要になると思います。

しかし、無線や電波を扱っている方はご存じですが、一部の例外を除き、勝手に電波を出すことは電波法という法律で禁じられています。

電波を出すためには、電波法で規定された厳しい基準を満たして免許を発行されたものしか電波を実際に出すことは許されないんですね。電波法以外にも、技適と呼ばれる審査を通さないといけない場合もあります。でも、研究や開発している途中でも電波を出して確認や解析をしたいですよね。そこで、電波暗室などの大型施設を借りて実験をしたりしますが、これもほぼ完成に近い状態でないと無駄なコストになりますし、準備なども大変です。

インタビュアー 電波を出しての検証というのは意外と大変なんですね。
 笹生 そうなんです。意外と大変なんですよ。

ある程度、開発も進んで最終ステージに近い実証実験などでも、実験局免許を取得しなければならない。ただ、実験局免許がもらえれば、指定した地域で自由に電波をだしてもよいことになります。しかし、こうした免許は電波を出してもよい地域なども限定されているので、遠くの地方が指定された地域の場合、そこまで装置を持って行って、限られた時間でデータを持って帰り、解析して・・・もしおもった結果が得られなければ修正して再実験となってしまいます。

このように、電波を出して実験することは準備や移動にかかるコスト面、時間的なコスト、そういったことが大いにかかるわけです。

インタビュアー それは大がかりになって大変ですね。
 笹生 ここまで説明した実証実験や免許の取得といったステップは、もちろん省くわけにはいかず必要なのですが、そこに至るまでの開発過程も時間的なコストがかかるわけです。そうしたフェーズの前にフェージングシミュレータを使用することで無駄なコストをかけずに性能を確認でき、開発を加速させる装置でもあります。

 

必要性は?

インタビュアー 実際の実証実験は必要だけれども、そこに至るまでの開発過程を加速させるためにフェージングシミュレータが必要になるということですか。
笹生 その通りです。

電波を実際に出すまで、開発していた無線送受信器の性能がわからないまま実証実験をするのは無駄になってしまう場合がある。そこでフェージングシミュレータという電波の飛び方をシミュレーションする装置に送信器と受信機を有線で接続して、想定する環境をフェージングシミュレータで模擬させる。

有線で接続するので、電波法には全く触れることなく実証実験に近い状態で無線器のテストができるわけです。

インタビュアー なるほど。

フェージングシミュレータを使えば、免許取得などの手間をかけずに、前もって無線機の性能を評価できて、そのうえで免許を取得して実証実験をすれば再実験の無駄などが省けそうですね。

笹生 そうなんです。

フェージングシミュレータを使えば、実験室で無線器の性能評価などが行えるため、開発を加速させることが可能です。

インタビュアー なるほど、前提条件はわかりました。

でもいまいちフェージングシミュレータがどんなものかピンときません。少し詳細に教えてくれますか?

笹生 まず最初からピンとくる方はいらっしゃらないと思いますので、簡単に説明したいと思います。
皆さんほとんどの方が、携帯電話、スマホ、WiFi などを使ってインターネットアクセスをされているかと思います。このとき、電波の入りが悪いなぁ、と感じるときもあると思います。場所を変えると電波の入りが途端に良くなったり。これは送信された電波というのは四方八方に飛んでいくわけですが、周りにある壁や地面、人や車といったものにぶつかって反射しながらやってきて、やっとその一部の電波が受信される仕組みなのです。この電波が送信されてから受信するまでの電波の飛び方を専門的には電波伝搬(でんぱでんぱん)と呼びます。実証実験では、実際の想定する場所に行って送信した電波が色々反射された場合の受信感度などを測定します。これを、フェージングシミュレータでは、有線で送られてきた送信電波を装置内で擬似的に様々なものと反射した状態を作り出し、有線で受信された電波として受信機に渡します。しかも、フェージングシミュレータは、パラメータの設定を変えることで、つまり周りの反射環境を変えることが自由にできますので、実証実験だけでは難しいあえて劣悪な環境などの模擬も可能となります。
インタビュアー 電波って簡単に届くわけではないんですね。
笹生 そうです。

電波は簡単には届かないんです。手前味噌ですが、弊社 Riviera の動作原理を説明した記事が CQ出版社の「RF ワールド No.22」に掲載されいます。アマゾンなどでも入手可能ですので是非検討の際にはご一読されることをお勧めします。

 

Rivieraの特徴

インタビュアー  この装置を使うことで、電波が受信される環境を模擬的に作り出せるとのことですが、これまでもそうした装置があったと思います。この Riviera の特徴はどんなところにあるんですか?
笹生 ずばり、小さくて安いので手軽に使える。ということです。仰る通り、これまでも様々なフェージングシミュレータがこれまでも多くありました。

しかし、大型で、数十kg もあり価格も数千万円後半から億のものが多かったです。

そのため、大手の研究室では導入が進んでいますが、台数が限られているため、多くの研究者でシェアして使用しているのが現状です。

また、持ち運びも容易でないので、気軽に自分の作業場所に移動して実験に使うことも容易ではありません。

弊社の Riviera は、1Box タイプの場合、サイズも B4 サイズ程度なのと、片手でも持ち運べ、価格も数分の1 です。

こうしたことから、弊社としては、Riviera のフェージングシミュレータはまだ粗削りの無線器の開発初期などに気軽に検証できるものとして作業机のそばにちょっとおいて使ってもらえれば良いなと思っています。

大げさですが、無線研究者一人に一台が夢です。

インタビュアー なるほど、導入コストも他社と比べて低いですし、軽くてサイズも小さければ気軽に使えそうですね。
笹生 そんな風に使ってもらえるとありがたいです。
インタビュアー ほかにメリットはありますか?
笹生 私自身が開発をしているので、質問や改善点があれば開発者である私にコンタクトしていただいて、直接対応できるところも強みです。また、Riviera は私が開発した IPコア を使用しているので、様々なプラットフォームに対応できることも強みですね。

もう一つ、弊社 RF レコーダ製品とも関連するのですが、サウンダーという手法で、実電波をそのまま丸ごと集録できます。その際に電波の飛び具合である伝搬状態を解析し、Riviera のパラメータ化することで、実環境と同様の動作をシミュレーションさせることが可能です。このメリットは、違う無線方式を同じ電波伝搬環境を再生させることで比較でき、性能評価を同じ土俵でできることも強みです。例えば、ある室内でサウンディングした電波環境を Riviera に設定し、W-CDMA と LTE ではどのくらい性能に差が出るかなどを、定量的に比較できます。

技術的に弊社製品と組み合わせることで。こうした部分もメリットとなります。

インタビュアー カスタマーごとにカスタマイズなどはできるのでしょうか?
笹生 もちろん、お客様の要望をお聞きして、カスタマイズがご希望でしたらカスタマイズさせていただくことも可能です。
インタビュアー カスタマーがこの製品を選ぶ際に注意する点はございますか?
まずは、お客様が送信したい電波の周波数・帯域幅です。これが、Riviera の製品仕様に収まっていればすぐに使用可能です。

また、微妙な場合などは是非相談をしていただければと思います。

ご対応できるような提案もさせていただくことも可能です。

インタビュアー なるほど、Riviera の特徴が良くわかりました。本日は有難うございました。
笹生 こちらこそ有難うございました。

本装置はなかなかわかりにくい部分も多いので、セミナーなどの企画を今後進めたいとも思っています。

 

文責 : ドルフィンシステム笹生

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